市職員の暴行事件について
※以下、収録された1次資料(文書や動画)はすでに公開されたものです。
【事務監査請求の概要】
❶令和4年11月25日付の古賀市職員の処分にて、「令和4年11月2日、業務終了後に飲酒し、市職員に対して暴行を加え傷害した。」と古賀市が公表。
❷ その後、詳細説明を求めたが、以下理由で拒否された経緯があります。
・プライバシーの侵害や2次被害の恐れがある
❸ところが、その後、令和4年11月26日の毎日新聞に詳細記事が記載されていることが判明。
➍すでに公表されている事実がありながら、嘘をつき、マスコミと市民を差別した不公平な対応を行いました。
❺ これは憲法21条「知る権利」、憲法14条「平等原則」に違反すると考えられ、不正の全容解明のため、監査を要望いたします。
❻ また、この事件に関し、情報開示、不服申し立てを行いましたが、ほとんど情報が開示されませんでした(☜クリック)。
古賀市職員懲戒等審査委員会実施報告書以外の委員に配布又は閲覧させた事案資料や懲戒処分の対象案 に関する聴取書及び報告書など情報開示可能と思われる資料が他に存在しないのか監査を要望いたします。
【事務監査請求結果に対する市民の会の考察】
古賀市職員の暴行事件について
1)市民とマスコミとで若干異なる取扱いをしている結果とはなる。(監査委員の判断)
→古賀市が公表している内容と新聞記事の内容は詳細が全く異なっているし、明らかに不公平である。
そもそも新聞記事のような内容を公表していれば、情報公開を求めることもなければ、今回の事務監査請求 も不要であった。
2)結局、すでに公表された新聞記事の事実がありながら、なぜ、古賀市がその後の市民の質問にはゼロ回答だったのか?監査結果に反映されていない。
3)「知る権利」や「平等原則」について、監査で全く触れていない。
→若干異なると判断しているのであれば、不公平ではないのか?
【事務監査請求結果 抜粋】
1 請求の要旨
「割愛」
2 争いのない事実
⑴ 市職員の処分と公表
令和4年11月2日、市職員による傷害事件が発生した。市は、令和4年11月25日、加害職員に対する懲戒処分(以下「本件処分」という。)を公表し、マスコミ各社にプレスリリースを配布した。
⑵ 本件処分に関する問合せ
██████氏(以下「████氏」という。)は、令和4年12月28日から令和6年8月30日にかけて、20通ほどメール及び投書で本件処分に関する質問を行い、人事秘書課がこれらの質問にメールで回答した。
⑶ 市政情報開示請求による情報開示と審査請求
上記⑵のやり取りの間に、████氏は、本件処分に関する市政情報開示請求を行い、これに対し、部分開示決定が出された。これを受け████氏は、部分開示決定に対する審査請求を行った。この審査請求に対しては、古賀市情報公開・個人情報保護審査会の諮問を経て、裁決が出された。
上記⑴、⑵及び⑶の時系列は下表のとおりである。
令和4年11月 2日 業務終了後に飲酒をして、加害職員が被害職員に暴行を加え怪我を負わせた事件が発生
令和4年11月24日 古賀市職員懲戒等審査委員会実施
令和4年11月25日 本件処分を古賀市公式ホームページに公表し、マスコミ各社にプレスリリースを配布
令和4年11月26日 毎日新聞に記事が掲載される
令和4年12月28日 ████氏と市の間で質問・回答等のやり取り
令和5年 2月17日 ████氏による市政情報開示請求
令和5年 3月 3日 市政情報部分開示決定
令和5年 5月15日 上記部分開示決定内容に係る████氏による審査請求
令和5年 9月11日 審査請求に対する裁決
令和6年 8月30日 ████氏と市の間で質問・回答等のやり取り
3 監査の結果
監査委員としては、請求の要旨①及び令和7年3月19日に実施した意見聴取の内容を踏まえ、市の公表内容が適切であるか否か、市民とマスコミとで異なる対応をしたか(異なる対応をした場合にはこのことが不合理であるか否か)、他に開示できる文書等はないかを監査し、本件各事務に違法又は不当な点がないかを検討する。
⑴市の公表内容の適切性について
ア 認定した事実
(ア)公表の指針
市は、服務規律の一層の向上と高い倫理性を確立することを目的として、地方公務員法第29条第1項の規定に基づく懲戒処分等について、原則として、①事案の概要、②該当職員の所属する所属名(被害者に対して特に慎重な配慮を要する場合は部局名とする。)、③該当職員の職名、④該当職員の年齢及び性別、⑤処分の内容、⑥処分年月日を公表することとしている。ただし、公表されることにより被害者のプライバシーが侵害される可能性がある場合には、例外的にその一部又は全部を公表しないことがある(以上について、古賀市職員の懲戒処分公表基準)。
また、市が、懲戒処分に関し記者から問合せを受ける際には、原則として人事秘書課長が対応し、公表した内容を前提に回答することとしている。
(イ)本件処分に関する公表の経緯
市は、令和4年11月25日、本件処分について古賀市公式ホ-ムページに公表し、公表したものと同一内容のものをマスコミ各社にプレスリリースとして配布した。
同日、複数の記者から記事作成のための電話取材があり、人事秘書課長がプライバシーに抵触しない範囲でこれに回答した。
(ウ)市による公表内容
市が職員の処分について公表した項目は以下のとおり。
a 所属 総務部
b 職名 参事補佐
c 性別 男性
d 年齢 40代
e 処分の対象となった事案
令和4年11月2日、業務終了後に飲酒し、市職員に対して暴行を加え傷害した。
f 処分内容 懲戒処分(減給6か月、給料の10分の1)
g 処分年月日 令和4年11月25日
(エ)市政情報開示請求について
令和5年2月17日に████氏を請求者として、古賀市長(所管課:総務部人事秘書課)に対し、「令和4年11月25日付で行われた古賀市職員の懲戒処分について、懲戒処分の対象となった事案の詳細が記録された文書(なお、個人識別に係わる情報や処分判断過程に関する情報は求めておらず、個人名等に黒塗りした上で、事案の経過のみを開示いただきたい)」との内容にて市政情報開示請求がなされた。これに対し、令和5年3月3日、古賀市情報公開条例第7条第1号及び第5号を理由に、部分開示決定がなされた。
(オ)審査請求について
令和5年5月15日に████氏を審査請求人として、古賀市長(所管課:総務部総務課)に対し、「令和5年3月3日付の市政情報開示決定通知の開示内容はほぼ全て黒塗りでした。令和4年11月26日の毎日新聞の朝刊には事件の概要が掲載、公表されています。公正公平な判断での市政情報開示を求めます。」との理由にて審査請求がなされた。
当初開示されていた情報は、古賀市職員懲戒等審査委員会実施報告書の「日時」「場所」に記載されている情報のみであったが、審査請求の手続きを経たのち、「対象事案」に関する説明の一部、出席者に関する情報(職名、委員会内の役割、氏名)が開示された。
イ 監査委員の判断
市は、本件処分の概要を上記(ウ)のとおり公表しており、古賀市職員の懲戒処分公表基準において公表すべきとされる情報をすべて明らかにしている。したがって、公表の内容として必要十分であると考えられる。なお、諮問を受けた古賀市情報公開・個人情報保護審査会の答申も、「対象事案」に関する説明の一部、出席者に関する情報を開示すべきとするにとどまり、古賀市職員懲戒等審査委員会実施報告書の大部分が不開示情報であるという結論であった。
よって、本件事務につき違法又は不当な点があったとは認められない。
⑵市民とマスコミに対する対応の差異について
ア 認定した事実
令和4年11月26日の毎日新聞では、上記(ウ)記載の市の公表内容に加え、「市によると、参事補佐は2日夕の業務終了後、この職員ら計4人で福岡市内の飲食店で飲み会を開いた。別の店でも飲食した後、タクシーで古賀市に戻ってきた3日未明、路上で職員の太ももを蹴り、首を押さえつける暴行を加えた。
職員の首にはあざができたという。2人の間に個人的なトラブルがあり「かっとなった」と理由を説明しているという。」との情報が報道された。
この記事は、記者からの個別の問合せに対し、市が回答した内容を基に作成したものである。
イ 監査委員の判断
確かに、市が問合せをしてきた記者に対し、公表内容よりも詳しい事実関係を伝えていることが認められる。しかし、記者に伝えた事実関係は、あくまで公表内容を補足する位置付けのものであり、新たな事実を明らかにするものではない。
他方、市民(審査請求人を含む)が市から本件処分に関する情報を入手するためには市政情報開示請求によることになる。古賀市情報公開条例第7条第1号から第6号において不開示情報が定められており、市は不開示情報を開示することはできない。
そうすると、市民とマスコミとで若干異なる取扱いをしている結果とはなるが、マスコミに対してのみ新たな情報を開示したわけではなく、また、古賀市情報公開条例で開示することができる情報が決まっていることからすれば、これらの異なる対応が不合理であるとはいえない。
⑶他に開示できる文書等はないかについて
監査委員の判断
令和5年2月17日の市政情報開示請求で求められている内容「令和4年11月25日付で行われた古賀市職員の懲戒処分について、懲戒処分の対象となった事案の詳細が記録された文書(なお、個人識別に係わる情報や処分判断過程に関する情報は求めておらず、個人名等に黒塗りした上で、事案の経過のみを開示いただきたい)」については、「古賀市職員懲戒等審査委員会実施報告」の部分開示決定及び審査請求に対する裁決による一部開示決定をもって回答されている。
また、監査委員において確認したところ、本件処分に関連し存在すると考えられる文書は市政情報開示請求で開示の対象になって開示されていると認められ、他に開示できる文書等はないと判断した。
よって、本件事務に違法又は不当な点はない。
4 監査委員の意見
本件事案は市職員の処分に係る公表内容が論点となっており、古賀市職員の懲戒処分公表基準に沿って迅速に情報発信していることは、当然であり適切な判断であった。
公表に当たり、傷害事案を対象とした処分ということで、被害者のみならず加害者のプライバシーにも配慮する必要があるため、細心の注意を払い、総合的に判断したうえで公表内容を決定したものと推察される。
しかしながら、市民とのメールのやりとりが繰り返され、市民の疑問が解消されず、事務監査請求に至ったことは残念である。
今後は、疑問を抱える市民の声に十分耳を傾け、その疑問に答えるとともに、たとえ相手が望まぬ結論であっても、法律の限界、条例等及び施策の趣旨などを分かり易く説明するなど、適切かつ柔軟な対応を望みたい。